白い手紙

 

卒業式のあとの話

 

 

 

 

女「卒業式で卒業証書を破くの、ちょっと憧れてたんだよね」
男「普通じゃないなそれ」
女「そう、普通じゃないからやってみたかった。ほら、私ってまじめじゃない?」
男「いや、授業中寝てただろ……」
女「そうじゃなくてさ、なんか思い切って校則を破ってみたかったけど、結局できなかった……みたいなさ?」
男「それを勇気と思うのは、どうかと思うけどな」
女「勇気とかじゃなくて、ただ、なんていうか」
男「なんていうか?」
女「『ああ、私って弱虫なんだな』って思っただけ!」
男「……そっか」

 

 

 

 

女「……あのね、もう一つ破ってみたかったものがあるの」
男「……なに?」
女「……これ」
男「手紙?」
女「うん、あげる」
男「え!?ちょ……えっ?どういう意味だよ!?」
女「あはは!何慌ててんのぉ?」
男「慌てるだろ普通!」
女「あははは!相変わらず面白いなぁ………ねぇ、それ破ってもいいよ」
男「はぁ……?破れるかよこんなの」
女「破って」
男「なんで……」
女「なんでも」
男「なんで、そんな泣きそうな顔してんだよ……」
女「……ごめん、やっぱり自由にしていいよ。でも、私の前ではあけないでね」
男「……わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

男「それから、俺と彼女が会うことは二度となかった。全てを知ったその後、彼女からもらった手紙をあける勇気が今更出てきた。

 

 

 

手紙の内容は、真っ白だった

 


男「……確かに、弱虫だよ」

男「俺はその真っ白な紙の上に返事を書いた。彼女が紙の後ろから、俺の字を一緒になぞってくれているような気がした」